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岡山地方裁判所 昭和60年(わ)972号 判決 1989年2月28日

本店の所在地

岡山県倉敷市白楽町八四番地

法人の名称

株式会社藤商

(旧商号有限会社藤商)

代表者の氏名

藤川武正

本籍

岡山県岡山市弓之町二番

住居

同県倉敷市酒津二、八二七番地

職業

会社役員兼貸金業 藤川武正

昭和三年一一月二八日生

右の株式会社藤商に対する法人税法違反、藤川武正に対する同法違反、所得税法違反各被告事件について、当裁判所は、検察官和田雅樹出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社藤商を罰金九〇〇万円に、被告人藤川武正を懲役一年四月及び罰金一二五〇万円に各処する。

被告人藤川武正において右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

被告人藤川武正に対し、この裁判確定の日から三年間、右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用中、証人小田寛、同永田実澄に各支給した分は被告人らの連帯負担とし、証人間野和夫、同林光市に各支給した分は被告人藤川武正の単独負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

第一  被告人会社は、昭和六二年九月二一日、有限会社藤商を組織変更し設立されたものであるが、有限会社藤商は、岡山県倉敷市白楽町八四番地に本店を置き(昭和五七年四月二日移転前の本店所在地は同市酒津二、八二七番地)、不動産の販売等を営業目的とし、被告人藤商は、同会社の代表取締役として、その業務全般を統括していたものであるところ、被告人藤川は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、あらかじめ造成費、支払手数料及び債権償却特別勘定等を架空に計上し、雑収入を圧縮するなどの不正工作を行ない、その所得を隠匿したうえ、

一  昭和五六年五月一日から翌五七年四月三〇日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が一八九九万一七二一円、課税土地譲渡利益金が一九二四万九九二〇円であり、これに対する法人税額が一〇八六万六〇〇〇円であったにもかかわらず、同市幸町二番三七号倉敷税務署の署長に対し、右事業年度の申告期限である昭和五七年六月三〇日までに法人税確定申告書を提出しないで、申告期限を徒過し、もって、不正の行為により右事業年度分の法人税一〇八六万六〇〇〇円を免れ、

二  昭和五七年五月一日から翌五八年四月三〇日までの事業年度における被告人会社の実際所得金額が四九八九万一三一九円、課税土地譲渡利益金が九三〇万三二〇七円であり、これに対する法人税額が二一七六万一九〇〇円であったにもかかわらず、前記倉敷税務署長に対し、右事業年度分の申告期限である昭和五八年六月三〇日までに法人税確定申告書を提出しないで、申告期限を徒過し、もって、不正の行為により右事業年度分の法人税二一七六万一九〇〇円を免れ、

第二  被告人藤川は、同市酒津二八二七番地に居住し、同所及び同市白楽町八四番地の事務所で貸金業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、あらかじめ貸金関係帳簿等を作成せず、貸金利息収入等を仮名で預金するなどの不正工作を行ない、その所得を隠匿したうえ、

一  昭和五六年分の実際所得金額が三七九九万六一四一円であり、これに対する所得税額が一三七九万一六〇〇円であったにもかかわらず、前記倉敷税務署長に対し、右年分の申告期限である昭和五七年三月一五日までに所得税の確定申告書を提出しないで、申告期限を徒過し、もって、不正の行為により右年分の所得税一三七九万一六〇〇円を免れ、

二  昭和五七年分の実際所得金額が四二七三万四一六六円であり、これに対する所得税額が一五五二万一七〇〇円であったにもかかわらず、前記倉敷税務署長に対し、右年分の申告期限である昭和五八年三月一五日までに所得税の確定申告書を提出しないで、申告期限を徒過し、もって、不正の行為により右年分の所得税一五五二万一七〇〇円を免れ、

三  昭和五八年分の実際所得金額が四三四七万五四四九円であり、これに対する所得税額が一七九九万一二〇〇円であったにもかかわらず、前記倉敷税務署長に対し、右年分の申告期限である昭和五九年三月一五日までに所得税の確定申告書を提出しないで、申告期限を徒過し、もって、不正の行為により右年分の所得税一七九九万一二〇〇円を免れ、

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の大蔵事務官(昭和五九年九月二六日付、昭和六〇年一月一八日付、同年二月六日付、同月二〇日付、同年三月八日付、同月九日付、同月一二日付、同年四月四日付、同月二四日付、同年五月九日付)及び検察官

(二通)に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の預金調査書(検察官請求証拠番号135)、有価証券調査書

判示第一の各事実につき

一  被告人の大蔵事務官に対する昭和五九年九月二七日付、同月二八日付、同月二九日付、同年一〇月二日付、同月三日付、同月一八日付、同年一一月二日付、同月二七日付、同年一二月一一日付各供述調書

一  証人山田惠章に対する当裁判所の尋問調書

一  山田惠章の検察官に対する供述調書抄本

一  山田惠章の検察官に対する供述調書(検察官請求証拠番号76、但し、一項一行目から一四行目までと一一項一行目から一九行目まで、一六項及び二〇項を除く)

一  山田惠章(検察官請求証拠番号100)、平田実(同番号85、98)、武田冨美子、三好敏之(同番号82、107)、永田実澄の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の売上高及び支払手数料調査書、仕入原価調査書、雑収入調査書、立証する金額のない科目調査書、仲介手数料調査書、棚卸高調査書、給料手当調査書、接待交際費調査書、旅費交通費調査書、修繕費調査書、租税公課調査書、雑費調査書、貸倒引当金繰入額調査書、支払利息調査書、事業税調査書、損益科目(決算書計上分)調査書、課税土地譲渡利益金額及び土地譲渡税調査書、調査事績報告書

一  登記官作成の昭和六〇年五月一七日付、昭和六三年五月二七日付各登記簿謄本

一  押収してある法人税決議書一綴(昭和六一年押第八二号の七)

判示第二の各事実につき

一  被告人の大蔵事務官に対する昭和五九年一二月一九日付供述調書

一  平田実(検察官請求証拠番号25、38)、三好敏之(同番号50)、間野和夫の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の収入金額調査書、支払利息調査書、経費調査書、貸倒損失調査書、利子所得源泉所得税調査書、給与所得調査書、雑所得調査書、預金調査書(検察官請求証拠番号48)

一  岡山県商工部商政課長、岡山県知事作成の各回答書

判示第二の一の事実につき

一  56年分の所得税の確定申告書写

判示第二の二の事実につき

一  57年分の所得税の確定申告書写

判示第二の三の事実につき

一  58年分の所得税の確定申告書写

(法令の適用)

一  該当法条

(一)  判示第一の各所為につき

(1) 被告人会社につき 法人税法一六四条一項、一五九条一項

(2) 被告人藤川につき 法人税法一五九条一項(所定刑中懲役刑を選択する)

(二)  判示第二の各所為につき 所得税法二三八条一項(所定の懲役と罰金を併科する)

一  併合罪の処理

(一)  被告人会社につき 刑法四五条前段、四八条二項(所定の罰金額を合算する)

(二)  被告人藤川につき

(1) 懲役刑につき 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第一の二の罪の刑に法定の加重をする)

(2) 罰金刑につき 刑法四五条前段、四八条二項(所定の罰金額を合算する)

(3) 罰金刑の併科につき 刑法四八条一項

一  労役場留置(被告人藤川の罰金刑につき)

刑法一八条

一  刑の執行猶予(被告人藤川の懲役刑につき)

刑法二五条一項

一  訴訟費用の負担 刑事訴訟法一八一条一項本文(被告人らの連帯負担につき更に同法一八二条を適用する)

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 鈴木正義)

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